有価証券のクロス取引とは
»2010年8月28日 (土)
有価証券の「クロス取引」とは、同一銘柄の株式等につき、同じ値段、同じ株数で「売り」と「買い」とをごく短期間に行う取引のことをいいます。
これによって法人は実質的にその株式を所有したままで、株式の時価が帳簿価額を上回っている場合には、含み益を計上して、いわゆる“益出し”効果を実現することができ、逆に時価が帳簿価額を下回っている場合には、いわゆる“損出し”効果を実現させることができるというわけです。
しかし、税務においては「同一の有価証券(売買目的有価証券を除きます。)が売却の直後に購入された場合において、その売却先から売却をした有価証券の買戻し又は再購入をする同時の契約があるときは、その売却をした有価証券のうちその買戻し又は再購入をした部分は、その売却がなかったものとして取り扱う」(法人税基本通達2-1-23の4)と規定されています。
「売却がなかったものとして取り扱う」とは「益金」にも「損金」にも算入されないということです。
また「同時の契約がない場合であっても、これらの契約があらかじめ予定されたものであり、かつ、売却価額と購入価額が同一となるよう売買価額が設定されているとき又はこれらの価額が売却の決済日と購入の決済日との間に係る金利調整のみを行った価額となるよう設定されているときは、同時の契約があるものとして取り扱う」(同通達注(1))とも規定されています。
決算対策として、上記取引を行ったとしても、税務上は「益金算入」、「損金算入」ともに認められませんので注意が必要です。