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小規模事業者のための退職金制度【第4回】生命保険

その生命保険、退職金対策として本当に有効ですか?

「退職金の準備に生命保険を使いましょう」——これまで多くの経営者がそう勧められてきました。しかし2019年の基本通達の改正以降、生命保険を退職金対策として使うメリットはほぼなくなりました。今回は、その理由について、わかりやすく解説します。

結論:今の新規契約は「節税と積立の両取り」ができない

先に結論からお伝えします。2019年7月以降に契約する生命保険は、損金に算入できる割合が下がり、以前ほどの節税効果が見込めなくなりました。あわせて、保険の運用利率も低い水準にとどまっており、単純にお金を増やす手段としても魅力があるとは言えなくなりました。

つまり「保険料を払いながら節税もできて、将来のお金も貯まる」という、かつての一石二鳥の使い方は、もう新規契約では成立しにくくなっているのです。

なぜそうなったのか

以前は、長期の定期保険(逓増定期保険や長期平準定期保険など)に加入すると、保険料の多くを損金に算入しながら、解約返戻金も多く戻ってきました。退職のタイミングで解約すれば、そのお金を退職金の原資に充てることができ、税負担も抑えられる、という仕組みでした。

ところが2019年7月、国税庁がこの取扱いを見直しました。解約返戻率(払った保険料に対して戻ってくる割合)が高い保険ほど、損金に算入できる割合を下げる、というルールに変わったのです。返戻率が高い商品ほど、保険料の多くをいったん資産として計上しなければならず、すぐに節税につながらなくなりました。

さらに、保険会社が示す運用利率(予定利率)も長らく低水準が続いています。中退共や小規模企業共済など、掛金が全額損金・所得控除になる他の制度と比べると、税務面でも利回りの面でも、生命保険を選ぶ積極的な理由は乏しくなっているのが実情です。

改正前に契約した保険には影響がありません

ただし、当然ながら2019年7月8日より前に契約した保険は、今回の改正の対象外です。 契約時点のルールがそのまま適用されるため、既契約であれば、当時想定していた損金算入割合や解約返戻金の効果は、今も変わらず続いています。

すでに改正前の旧契約をお持ちの場合は、あわてて見直す必要はありません。かつての条件のまま大切に継続していけば良いのです。

では、生命保険はもう不要なのか?

ここまでのお話は、あくまで「退職金の積立手段」としての話です。生命保険には、もう一つ大切な役割があります。それは、経営者や役員に万が一のことがあったときの「保障」です。

経営者が急に亡くなったり、働けなくなったりすると、会社には次のようなお金が必要になります。

  • 借入金の返済(個人保証がついている場合は特に重要)
  • 当面の運転資金(売上が落ち込む間の人件費や仕入代金など)
  • 取引先や金融機関への信用を維持するための資金

これらに備えるための保険金額を「必要保障額」といいます。生命保険は、この必要保障額を確保する手段として、今も十分に有効です。

必要保障額の考え方(計算例)

必要保障額は、おおまかに次の式で考えます。

必要保障額 = 借入金残高 + 当面の運転資金 − 現預金などすぐに使える資産

たとえば

  • 借入金残高:3,000万円
  • 当面の運転資金(3か月分):750万円
  • 現預金など:500万円

といった会社の場合は

3,000万円 + 750万円 − 500万円 = 3,250万円

が必要補償額ということになります(ただし、あくまで一例です)

このように、必要保障額は会社ごとの借入状況や事業規模によって大きく変わります。金額を試算したうえで、必要な分だけ保障を確保する、というのが今の時代に合った生命保険の使い方です。

まとめ

2019年の改正により、生命保険を「節税しながら退職金を積み立てる」手段として使う魅力は薄れました。運用利率の低さも重なり、他の退職金準備制度と比べると見劣りする場面が増えています。ただし、改正前からの契約には影響がなく、既契約は引き続き有利な条件を維持できます。そして何より、生命保険は「万が一の保障」という本来の役割において、今も変わらず有効な手段です。退職金対策と保障対策は分けて考え、それぞれに合った制度を選ぶことが大切です。

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